大阪高等裁判所 昭和50年(行コ)13号 判決 1975年10月31日
控訴人 張復生
被控訴人 和歌山大学教育学部附属中学校長
訴訟代理人 麻田正勝 国見清太
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実<省略>
理由
当裁判所も控訴人の請求は理由がないと判断するもので、その理由は次のとおり付加訂正するほか、原判決理由のとおりであるから、これを引用する。
(一) 国立大学附属中学校長のなす入学許否の処分は、原判決の説くとおりいわゆる自由裁量行為に属し、したがつて同附属中学校の入学者選抜方法として抽せんによるか、学力試験によるか或はその他の方法によるかは、当該年度の志願者数、人的物的施設等諸般の状況を参酌したうえ、その裁量により自由に決定しうるところであつて、その採用にかかる選抜方法が地の方法に比較してより合目的的であるか否かは司法裁判所の判断すべき事項ではなく、ただそれが憲法その他の法条に反し、或は裁量権の濫用にわたる場合にのみこれを規制しうるにすぎない。
(二) この見地において、控訴人の挙げる憲法二六条の法意を考えると、同条にいわゆる「その能力に応じて」とあるのは、能力以外の人種、性別、社会的身分、経済的地位等によつて、教育上差別的待遇をうけないことを意味するにすぎず、被控訴人が本件抽せんによる選抜方法を採用したからとて、右能力以外の事由により差別的待遇をしたものというに当らず、また志願者の人権を無視し、その人格を等閑視するものと見ることはできないのであつて、教育基本法にも何ら抵触するところはない。
(三) 原判決の理由の内、「むしろ学力優秀な生徒のみを選抜する結果にならないことこそが肝要なのである。」との部分(理由六枚目裏二行目)は、当裁判所のなすべき判断の範囲を超えているので、これを削除する。
以上により、本件控訴を棄却し、民訴法九五条、八九条により主文のとおり判決する。
(裁判官 沢井種雄 大野千里 中田耕三)